NGを指摘されたが「何ならOKなのか」が分からない
いちいち調べ直すのが手間で、結局いつも同じ言い回しになってしまう
部下や外注先に「なぜダメなのか」根拠を伝えきれない  

そんな課題を抱える広告・販促担当者は少なくありません。
薬機法広告規制への対応は、単なるチェック作業ではなく、売り上げに直結する重要な業務です。

本記事では、薬機法広告規制に関する広告表現の判断に迷わないための基本知識として、

  • 許容される言い換え表現の考え方と使用パターン
  • 広告として規制される判断基準
  • NGとなる表現の具体例とその理由

を体系的に整理しています。

この記事を読むと、薬機法に対応しながらも訴求力を落とさない広告表現の選び方を習得でき、
判断に迷わない、社内で共有しやすい「表現の判断基準」が手に入ります。
自社商品を安心して魅力的に伝えるための土台として、ぜひご活用ください。

薬機法広告規制を守った広告作成のポイントはたった2つ

薬機法の広告規制を守りつつ、商品の価値や魅力を正確に伝えるには、法的に許容される範囲内で、訴求力のある表現を選ぶ技術が求められます。
以下の2点をおさえるだけで、制限がある中でも商品の魅力が伝わる広告が作れるようになります。

  1. 禁止される表現を正しく理解する  
  2. 許容される言い換え表現のパターンを把握する

薬機法では、消費者に誤認を与えるおそれのある広告表現が禁止されています。
次の3点を意識すると、違反リスクを避けられます。

  1. 効果を断定しない
    例)絶対に治る/100%効く
  2. 医療行為と誤認させない
    例)病院に行かなくても大丈夫/薬いらず
  3. 体験談で効果を保証しない
    例)これで白髪が黒くなりました(※個人の感想です)

また、「※個人の感想です」といった打消し表示は、意味をなさないという見解が消費者庁から出されています。
なぜなら、広告内で効果・効能を表現する一方で、体験談が効果・効能を表現していないとすることに、矛盾が生じるからです。

以下に、問題と考えられる広告表現をいくつか紹介します。

表現の種類NG例問題点
効果の表現ニキビが治ります・疲れに医薬品のような効果と受け取られる
医療行為の代替表現もう薬は不要です医療行為の代わりになると誤認させる
即効性を強調する表現たった3日で虚偽・誇大な広告と判断される可能性がある
体験談を使った誘導このサプリで便秘が治った個人の感想でも、効果を保証するように見える
絶対性・完全性の表現絶対に・完全に誇張された表現として薬機法に抵触する可能性あり

薬機法に抵触しないためには「事実」と「印象」の違いを見極め、表現を調整する必要があります。
言い換え表現の作成には、以下の2つの工夫が有効です。

  1. 効果を断言せず「サポートする」「守る」など緩やかな言葉に置き換える  
  2. 主観的または感覚的、状況的な表現に置き換える

一般化粧品と一般的な健康食品について、それぞれの言い換え表現例を確認しましょう。

以下に一般化粧品の言い換え表現例をまとめました。

NG表現使用例注意ポイント
シミが消える年齢に応じたケア・年齢による悩み「シミ」は治療対象。印象・保湿によりキメが整う作用内で表現。ケアや悩みにずらす。
シワを改善する弾むようなハリ肌へ「改善」は医薬品的。肌状態の印象・手応えで表現。
ニキビが治るすこやかな肌状態に「ニキビ」「吹き出物」は医薬品領域。予防もNG。
肌荒れを治す乾燥から肌を守る治療や症状名はNG。保湿などによる「肌を守る」に限定。
毛穴が引き締まるキメの整った印象に「毛穴」は慎重な運用が必要。目立たなく見せる表現に。
くすみが取れるクリアな印象の素肌へ「くすみ除去」はNG。肌印象・明るさに寄せる。
美白効果メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ医薬部外品のみ可能。条件付きで正確に記載。
肌再生年齢に応じたうるおいケア「再生」「若返り」はNG。ケア方法へ寄せる。
髪が生える(育毛)ふんわりボリューム感のある髪へ「発毛・育毛」は薬用のみ。髪の印象・感触に留める。
白髪がなくなる若々しい印象へ導く白髪染めでない製品で白髪改善はNG
脱毛するつるんとした肌触りへ「除毛・脱毛」は医薬部外品のみ。使用感に寄せて。

広告表現の中で「透明感のある肌へ」といったフレーズは、
一見すると化粧品らしい柔らかい表現に見えますが、実は注意が必要です。
過去に、東京都薬務課が「透明感」という表現を“美白効果の誤認につながるおそれがある”として指導を行った事例があります。

そのため、「透明感」というワードを使いたい場合には「※角質層が整うことによる肌印象です」などの注釈を併記して、
表現の趣旨が“物理的な整肌”であることを明示する必要があります。

必要に応じて注釈を加えると、薬機法上のリスクは回避しやすくなるでしょう。

一般的な健康食品の言い換え表現例をまとめました。

NG表現言い換え表現例注意ポイント
効果がある毎日の健康をサポート効果を断定しない。補助的役割に留める。
内側から整うカラダの内側からサポートします「整える」は医薬品的。感覚的な言葉に置換。
脳の発達を促進学習をサポート成長や発達はNG。あくまで状況支援の表現。
視力を回復するクリアな毎日をサポート「視力」「目」など部位名は避ける。画像で補完。
目覚めがよくなる目覚めからすっきり活動感覚や生活リズムへの影響を示す。
疲労回復毎日ハツラツと過ごす「疲労」は症状に該当。体験談風に曖昧に表現。
肌質が改善される美容をサポート「改善」「治す」はNG。保湿・バランス維持にとどめる。
髪が生えるつややかで健やかな印象の髪に「発毛・育毛」はNG。印象・見た目表現に言い換え。
血糖値を下げる糖質が好きな方の食生活をサポート数値改善の直接表現はNG。生活習慣の補助表現に。
便秘を解消する毎朝のスッキリ習慣に「便秘」は疾病にあたるため避ける。感覚表現を。

  

一般健康食品の広告を行う際には、「消化を助ける」「視力を回復する」といった、
医薬品的な効能・効果は訴求できません。
認められる表現は「栄養素の補給」や「健康の維持・サポート」といった、
あくまで日常の栄養補助にとどまる表現に限られます。

また、「髪」「目」「お腹」といった具体的な体の部位名も記載できません。
仮に「視力が回復する」「髪につやが出る」といった意図の訴求を行いたい場合は、
文言ではなく、使用イメージを伝える画像や間接的な表現を活用する工夫が求められます。

ただし、画像や表現の仕方によっては消費者に過度な期待を与えると判断されるため、
広告審査に通らなかったり、最悪の場合は行政指導につながったりする恐れもあります。

表現設計にあたっては「広告全体で見たときにどのような印象を与えるか」という観点で、
慎重に判断を進めていく必要があります。

機能性表示食品といった特定の効能効果の表現が許されている商品については、
届出表示内での表現が求められます。

 

薬機法の広告規制に該当するかを判断する3つのチェック項目

 

薬機法違反は「どんな表現を使ったか」だけでなく「誰が」「何を」「どのように伝えたか」によって判断されます。

薬機法に関する広告規制の対象かを正しく見極めるに、以下の3つの視点を押さえましょう。

・発信者(個人・企業)として規制の対象であるか  
・製品やサービスが薬機法の範囲に含まれるか  
・発信が「広告」として法律上定義されるか  

薬機法における広告表現のルールは「誰に向けて」「どのような商品について」「どう表現したか」という構造で成り立っています。

この3点を体系的に理解すると、自社や取引先の発信媒体が薬機法の規制対象になるかを判断できるようになるでしょう。

次章では、それぞれの判断基準について具体的に解説します。

 

薬機法は誰が発信しても、違反すれば法的な責任を問われる法律です。
個人や中小企業であっても例外はなく、行政指導や業務停止といった処分を受けるリスクがあります。

そのため、広告を出稿する際は必ず自社の責任範囲を意識しましょう。
以下の発信は、条件次第ではすべて広告とみなされ、薬機法の規制対象となります。

・企業の公式広告  (LP、バナー、チラシなど)
・社員や関係者によるSNS投稿  
・外部モニターや口コミ誘導を含むPR施策  

たとえば、社員が自身のSNSで化粧品の開発担当者であることを明かしながら
「このクリームを使ったらシミが薄くなった!」と投稿した場合。  

一見個人の感想のように見えても、企業との関係性や職務上の立場が明示されていれば、
広告とみなされる可能性があります。

発信者が誰であれ「企業との関係性があるか」が大きなポイントです。

社員のSNSやインフルエンサーの投稿、アフィリエイト記事なども、
企業との関係性がある場合には、広告としての注意を払いましょう。

 

薬機法の対象は、医薬品や医療機器に限られません。
化粧品や健康食品も厳しく規制されています。

広告担当者が注意すべき品目は以下のとおりです。

・医薬品・医薬部外品  
・化粧品  
・健康食品
・医療機器  

中でも、医薬品でない化粧品や健康食品の「効果・効能」を連想させる表現は厳しく制限されています。

健康食品でいえば「体内の炎症を抑える」「血糖値を下げる」「髪にハリを与える」などの、

  • 体の変化を述べる
  • 体の特定部位を表示する

といった表現は、医薬品と誤認されるリスクがあり、薬機法上NGとなる可能性が高いです。

また、化粧品においては「化粧品等適正広告ガイドライン」に定められた、56の効能効果のみが広告で表現可能とされています。

たとえ実際に高機能な成分が含まれていても、効能・効果を越える表現をした場合は違反となります。

つまり、同じ成分を使っていても「健康食品」か「化粧品」かで許される表現は異なるということです。

取り扱う商品の種類によって、どこまでの表現が許されるかをガイドラインや関連法規を確認して、事前に把握しましょう。

 

薬機法において「広告」と見なされるかどうかは、見た目の宣伝感や媒体種別ではなく、法的に定義された3つの要素によって判断されます。

以下の3点すべてに該当した場合、その発信は「広告」として薬機法の規制対象となります。

・顧客を誘導する意図がある  
・商品名やサービス名が明示されている  
・一般消費者が閲覧・接触できる状態にある  

たとえば、自社ブログに「このクリームで毛穴が消えた」という文章を掲載した場合。

・「効果がある」と読める表現で購入意欲を促している
・商品名(ブランド名)が明記されている
・自由にアクセスできるWebページで公開されている

上記を満たしているため、販売ページでなくても広告と判断され、薬機法の適用対象となります。

また、「毛穴が消えた」という表現は、化粧品で許容されている56の効能効果を逸脱している可能性が高く、薬機法違反と見なされるリスクがあります。

つまり「効果を連想させる表現があり、商品名が出ていて、誰でも見られる」条件がそろった瞬間、その内容は薬機法の規制対象になります。

インフルエンサーに依頼した発信や、アフィリエイト記事も広告とされ、発信元が企業と関係性を持つ場合、企業側にも責任が及ぶ可能性があります。

 

まとめ|薬機法の広告規制を守りながら広告効果を最大化するには

 

広告表現を慎重にチェックする必要がある担当者にとって「薬機法の遵守」と「訴求力あるコピー」の両立は常に悩ましいテーマです。

まずは以下の2点を押さえることが、広告制作の土台となります。

  • 薬機法で禁止される表現を正しく理解する
  • 許容される言い換え表現のパターンを把握する

実務レベルで上記を整理しておくと、広告制作におけるリスク回避と判断スピードの向上が期待できます。

「この表現、なんとなく不安…」という状態から「根拠を持ってOK/NGを判断できる」状態へ。

薬機法対応は、単なる“防御”ではなく「ブランドの信頼性を守りながら訴求力を高める“攻め”の戦略」にもなります。

さらに、判断基準をチームで共有できれば、レビュー作業の属人化を防ぎ、制作のスピードと品質も向上するでしょう。

本記事を通じて得た知見を、ぜひ貴社の広告体制の強化にご活用ください。

カテゴリー: 薬事法/景品法