近年、ECモールでの広告審査が厳格化し、適切な表現の見極めがますます難しくなっています。
「競合が使用しているキャッチコピーを参考にしたが、審査でNGになった」
「ECモールの規制が突然変更され、昨日まで問題なかった広告が修正対象になった」
こうした課題に直面した経験はないでしょうか。
通販事業者にとって、広告の訴求力を高めることは売上拡大の鍵ですが、
薬機法のルールを正しく理解しなければ、意図せず違反リスクを抱えることになります。
薬機法違反が発覚すると、行政指導や課徴金、商品の販売停止といった
深刻な影響を受ける可能性があります。
消費者庁や厚生労働省だけでなく、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングといった
ECモール自体が審査を強化しており、違反広告は即座に非承認・削除の対象です。
結果、広告の掲載停止や販売機会の損失が発生し、事業の成長を妨げるリスクにつながります。
「どの表現なら許容範囲なのか?」
「薬機法を遵守しながら、効果的な訴求を行う方法は?」
本記事では、上記の疑問を解消するため、
薬機法ガイドラインや厚生労働省の通知をもとに、
薬機法に準拠した広告表現の基本ルールを解説しました。
まとめでは、薬機法を守ったコピーを作るための「薬機法言い換え表現集」を紹介しています。
本記事を読むと、薬機法違反のリスクを抑えながら、広告審査をスムーズに通過し、
修正作業を最小限に抑えることが可能になります。
さらに、競合との差別化を図り、広告戦略を洗練させるためのヒントも得られるでしょう。
薬機法の基礎を押さえた上で、
安全かつ効果的な広告運用を目指す方は、ぜひ最後までお読みください。
Contents
はじめに|薬機法とは
薬機法とは、医薬品や化粧品、医療機器などの品質・有効性・安全性を確保するための法律です。
製造・販売だけでなく、広告を含むあらゆる活動において厳しく規制されています。
また、健康食品や美容雑貨の広告にも注意が必要です。
医薬品と誤認される表現を使用すると「未承認無許可医薬品」とみなされ、薬機法の対象となります。
なお、本法律は2014年に「薬事法」から改称され、
正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に変更されました。
通称「薬機法」と呼ばれています。
1. 広告運用における薬機法の全体像
企業が広告を運用する上で、最初に理解すべきポイントは 「医薬品等適正広告基準」 です。
医薬品・化粧品・健康食品などの「広告制作において遵守すべき具体的なルール」を定めています。
実際の広告運用に即した考え方を詳しく解説しているのが、
厚生労働省の通知 「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」 です。
広告審査を通過するための具体的な基準や、違反を避けるためのポイントが記載されています。
薬機法は、特定の企業や事業者に限らず、広告を発信するすべての人に適用される法律です。
アフィリエイターやSNSのインフルエンサーによる、PR投稿も対象となるケースが増えています。
2. 薬機法はすべての発信者が遵守すべきルール
たとえば、2020年に発生した「ステラ漢方事件」では、広告主や広告代理店だけでなく、
商品を紹介したインフルエンサーも薬機法違反に問われました。
このような事例を踏まえ、広告・PR活動を行う際には、企業側だけでなく、
関与するすべての関係者が薬機法を正しく理解し、適切な表現を用いることが求められています。
3. どんな表現が「広告」とみなされるのか
薬機法では、以下の3つの要件を満たす場合「広告」とみなされ規制の対象となります。
1) 消費者の購買意欲を高める意図があること
2)商品名が明示されていること
3)一般消費者が目にできる状態であること
たとえば、インフルエンサーがSNSで商品を紹介する場合
「商品名が明記されている」「PR目的の投稿である」場合は、広告とみなされます。
企業が投稿内容に関与していた場合、企業側も薬機法違反の責任を問われる可能性があります。
近年、企業のPR活動と一般消費者の口コミの境界は曖昧です。
口コミは広告にあたる、という認識を持って、
発信者や企業は適切な広告表現を心がける必要があります。
引用元:平成10年9月29日付け医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知
広告担当者が知っておきたい薬機法7つのポイント
薬機法における広告表現の規制は、第66条から第68条に明記されています。
これらのルールは「医薬品等適正広告基準」で詳細に解説されており、
広告制作時に遵守すべきポイントとなります。
以下に、広告担当者が特に注意すべき7つのルールを選出しました。
1.虚偽・誇大広告は禁止
薬機法では、消費者に誤解を与えるような虚偽・誇大な広告表現を厳しく規制しています。
特に、効果の誇大な表現や、事実と異なる情報の掲載は認められません。
以下のような表現は、違反に該当するため注意が必要です。
・実際よりも効果があるように見せる表現
例:飲むだけで体重が5キロ減ります!
・医薬品と勘違いさせる表現
例:飲めば体が楽になります
体験談を用いて効果を保証する表現
例:「この化粧水を使ったらシミが消えました!」
ダイエットの訴求では、適切な運動と食事制限がセットで、
6か月で4~5kg程度の減量が許容範囲です。
消費者の関心を引くために誇張した表現を使用すると、薬機法違反となるリスクが高まります。
ー
薬機法第六十六条
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、
製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、
虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、
医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、
又は流布することは、前項に該当するものとする。
(一部抜粋)
ー
2.認められていない効能・効果を伝えるのは禁止
薬機法では、定められた範囲内の効果や効能のみ、表現することができます。
特に注意が必要なのが健康食品や美容雑貨です。
健康食品は医薬品ではないため薬機法の対象外ですが、
広告で「免疫力アップ」「がん予防」「血糖値を下げる」などといった効果をうたってしまうと、
未承認無許可医薬品とみなされ、薬機法違反となります。
健康食品の効果を伝えたい場合は、
次の3つの制度を活用すると、ルールに沿った表現が可能になります。
・特定保健用食品(トクホ)
・栄養機能食品
・機能性表示食品
ー
薬機法第六十八条
何人も、(略)に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、
(略)認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告を
してはならない。
ー
3.効能や安全性を保証する表現の禁止
薬機法では「この商品を使えば必ずよくなる」「絶対に安全です」といった、
効能や安全性を保証する表現を禁止しています。
以下のような表現は違反の対象となるため、広告制作時には注意が必要です。
・用法や用量に関する表現
例:「食後に1回3錠服用する」
・効果や安全性を断言する表現
例:「副作用ゼロ」「誰にでも効果あり」
・最大級の表現
例:「業界No.1」「最強の効果」「世界一の薬」
・効果が出るまでの時間を明記する表現
例:「たった1日で治る」「3日間効果が続く」
「飲めばすぐ効く」「何回飲んでも安全」「使えば絶対にきれいになる」などの表現も、
消費者に誤解を与えるため、注意が必要です。
4.臨床データの活用に関する制約
商品がどれくらい効果があるのかを伝えるために、
臨床データや試験結果を載せたいケースがあります。
しかし、医薬品や化粧品の広告において、
臨床データや試験結果の掲載は、原則として禁止されています。
理由は、試験データだけでは消費者に十分な説明ができず、誤解を招く可能性があるためです。
ただし、健康食品や雑貨に関しては、薬機法の対象ではないため、
臨床データを載せること自体は禁止されていません。
ただし、医薬品と誤認されるような表現を用いた場合「未承認無許可医薬品」とみなされ、
薬機法違反になるリスクがあります。
5.口コミやレビューの注意点
「実際に使った人の感想を載せれば問題ない」と考えられがちですが、
口コミやレビューも薬機法の規制対象です。
薬機法では、体験談があるだけでは、効果や安全性の証拠にはならないという考え方があります。
そのため、消費者に認証を超える効能効果があるような誤解を与える
口コミやレビューは基本的に使えません。
以下のような表現は薬機法違反に該当するため、注意が必要です。
「このサプリを飲んで、血圧が正常になった」
「使った翌日から、シミが消えた」
「医者に通わなくても、この薬を飲めば治った」
ただし、以下のようなケースでは、薬機法の違反にはなりません。
1.使用感を伝える内容
「さっぱりした使い心地で気持ちいい」
「甘くて飲みやすい」
2.タレントが商品の特徴を説明する広告
ただし、効果を保証するような表現は不可
企業がSNSや公式サイトで口コミを紹介する際も
薬機法に抵触しないよう、慎重に表現をチェックする必要があります。
6.他社の製品を悪く言うのは禁止
薬機法では、他社製品を誹謗中傷する広告表現や、他社と比較する広告表現を規制しています。
以下のような表現が、違反に該当します。
・他社の製品を否定する表現
例:「他社の口紅は時代遅れ」
・他社製品と比較し、自社製品を優位に見せる表現
例:「他社の化粧水には○○が入っているが、当社の商品は無添加で安心」
比較広告をする場合は、自社の製品の中で比較します。
「新しくなった○○は、従来品より保湿力がアップ」といった表現なら問題ありません。
暗にでも「他社より優れていると伝わる表現」には注意が必要です。
7.医療関係者の推薦や公的機関の認可をうたう表現の禁止
薬機法では、医師や薬剤師などの専門家が商品を推奨するような広告表現を禁止しています。
たとえ事実であっても、以下のような表現は使用できません。
・皮膚科医もおすすめ
・薬剤師が選ぶNo.1のサプリメント
・歯科医が認めたホワイトニング効果
また、「厚生労働省認可」「特許取得済み」といった表現も、
消費者に誤解を与える可能性があるため、事実であっても使用できません。
このような規制がある背景には、医療関係者や公的機関の名前を出すことで、
消費者が「この商品には確実な効果がある」と誤認してしまうリスクがあるためです。
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10 医薬関係者等の推せん
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、
世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、
公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。
ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが
指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。
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薬機法に違反した際の4つのリスク
薬機法を守らずに広告を出してしまうと、企業はさまざまなリスクを負います。
最悪の場合、法的制裁を受ける可能性があり、事業継続に影響を及ぼすことも考えられます。
ここでは、薬機法違反によって生じる、以下の4つのリスクについて、わかりやすく解説します。
・行政指導・命令
・課徴金制度
・刑事罰
・社会的信用の失墜
1.行政指導や命令を受ける
薬機法に違反すると、まず行政指導という形で改善を求められます。
具体的には、違反した広告を修正するよう命じられたり、
違反の原因や改善策について報告書の提出を求められたりします。
繰り返し違反を行った場合や悪質な事例と判断された場合には、
業務停止命令や許可の取り消しといった厳しい措置が取られます。
2.売上の一部を支払う「課徴金制度」
薬機法では、違法な広告を出した企業に対し、売上の一部を罰則として支払わせる制度があります。
これを課徴金制度といいます。
薬機法の第66条(虚偽・誇大広告の禁止)に違反した場合、
違反期間中に販売された商品の売上の4.5%が課徴金として徴収されます。
従来の制度では抑止効果が不十分であるという考えのもとに、2021年8月1日から施行されたものです。
ただし、課徴金の合計額が225万円未満の場合は、納付命令は出ません。
3.罰金や懲役などの刑事罰を受ける
薬機法違反は、刑事罰(懲役や罰金)が科されます。主な罰則は、以下のとおりです。
・違反した状態で販売を続けた場合
「3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方」
・違反広告を掲載した場合
「2年以下の懲役または200万円以下の罰金、またはその両方」
行政指導の後に刑事罰が科されるとは限らず、
違反が確認された時点で令状による捜査や押収が行われます。
過去の事例では、罰金刑で済むケースが多いですが、
前科がついてしまうことには変わりはありません。
4.企業の信用が失われる
薬機法違反が公になると、情報はSNSやニュースで広まり、企業のイメージが大きく損なわれます。
特に近年は、消費者の間でも薬機法の知識が広まっているため、
誤解を招く広告が出ると、すぐに指摘されてしまいます。
行政指導を受けた事実は原則として公表されませんが、
報道機関の報道やSNSでの拡散により、一度悪いイメージがついてしまうと
消費者の信頼を取り戻すのが難しくなります。
結果として、以下のようなビジネス上の問題が発生する可能性があります。
・株価の下落
・取引先との契約解除
・広告媒体での掲載拒否
薬機法違反を回避するための3つのステップ
薬機法違反を防ぐために意識したい3つのステップを紹介します。
1.ガイドラインを理解する
2.変更や最新情報を定期的に確認する
3.外部パートナーとルールを共有する
1.ガイドラインを理解する
薬機法だけでなく、厚生労働省や業界団体が出しているガイドラインには、目を通しておきます。
まずは「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」に目を通し、
次に業界ごとのガイドラインもチェックすると、より具体的なルールを理解できます。
業界別の主なガイドライン
・化粧品:「化粧品等の適正広告ガイドライン」(日本化粧品工業会)
・医療機器:「医療機器適正広告ガイド」(日本医療機器産業連合会)
健康食品に関しては薬機法の対象外ですが
「健康増進法」や「景品表示法」に基づいた広告表現が必要です。
各製品ごとにさまざまなガイドラインが出されているため、一度検索してみると良いでしょう。
2.変更や最新情報を定期的に確認する
薬機法は時代に合わせて変化しており、新しい通知や改正内容が公示されます。
定期的に最新情報をチェックしましょう。チェック方法には、以下があります。
・行政の公示を確認する
・業界団体のセミナーに参加する
・薬機法専門家主催のコミュニティに参加する
日頃から情報収集を行い、変更があっても見逃さない体制作りがポイントです。
3.外部パートナーとルールを共有する
広告制作を外部のデザイナーやライターに依頼する場合、
薬機法のルールを事前に共有し、認識を統一する必要があります。
制作担当者がルールを理解していなければ、誤った表現が使われてしまい、
後から修正が必要になります。
広告制作をスムーズに進めるために、事前に薬機法に関する表現ルールをまとめ、
社内や外注先と共有しましょう。
まとめ|薬機法を守ることは、企業の信頼を守ること
薬機法を遵守することは、単に規制をクリアするだけでなく、
企業の信頼を維持し、コンプライアンスを強化するためにも極めて重要です。
自社での対応が難しい場合は、薬機法に精通した広告代理店や専門家のチェックを活用し、
法令違反のリスクを抑えながら適正な広告運用を行うことをおすすめします。
【無料資料】薬機法に対応した広告表現を学べる「薬機法言い換え表現集」
「薬機法を守りながら、伝わるコピーを書きたい」
「NGワードの適切な代替表現を学びたい」
このような課題を解決するため、
広告担当者向けの「薬機法言い換え表現集」を無料で提供しています。
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具体的な代替フレーズを紹介しています。
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