定量調査の調査票設計

前回は定量調査の実施手順についてご紹介しました。その中で調査票(アンケート)設計時の注意点について触れましたが、今回はさらに詳しく調査票設計についてご紹介いたします。

現在はインターネット調査が主流となり、だれでも簡単に調査票を設計できます。しかしインターネット調査であっても、一度開始してしまうとやり直しは難しいものです。私自身も調査開始直前に調査票の誤字に気づき、ヒヤッとした経験が何度もあります。

適切な調査票で調査を実施できるように、調査票の設計方法をおさらいしてみましょう。
 

ターゲットを抽出する質問を入れる

たとえば調査のターゲットが「女性20代以上で過去1年に日焼け止めを購入した人」であるとします。そうすると、少なくとも①性別、②年代、③日焼け止めの購入時期の質問は入れなくてはなりません。 通常、このような質問は調査票本編に進む前に、事前調査(スクリーニング)の調査票に入れます。
 

適切な質問形式を使う

質問形式は大きく分けて2種類あります。1つは選択肢形式で、もう1つが記述形式です。 選択肢形式は具体的な回答を求める場合に使い、記述式は意見を求める場合に使います。

選択肢形式の質問の場合、ありうる選択肢をなるべく多く調査票に含めます。 実はこれがなかなか大変です。 そのため、安易に記述式質問ばかりの調査票をつくる人がいます。

しかし、記述式の方が回答者に負荷がかかりますし、分析時に回答を1つ1つ読むのも大変です。各項目にどの質問形式が適切か、考えて設計しましょう。
 

1つの質問で1つのことだけを明確な言葉で聞く

1つの質問文で複数のことを聞いてはいけません(ちなみに、多くの場合このようなことが起こるのは、質問数が増えると調査費が高くなるため、質問数を「節約」しようとするからです)。

たとえば「あなたはスキンケア製品やメイクアップ製品の購入に毎月いくら使っていますか」という質問です。これでは、回答者によって、スキンケア製品の購入費だけ回答したり、メイクアップ製品の購入費だけ回答したり、スキンケア製品とメイクアップ製品の購入費合計を回答したりするパターンが考えられます。

こうならないために、質問文では1つのことだけを明確に質問します。たとえば、「あなたはスキンケア製品とメイクアップ製品の購入に、合計毎月いくら使っていますか」などとして合計を回答してもらうか、スキンケア製品の購入費の質問、メイクアップ製品の購入費の質問をそれぞれ独立して設けるか、といったことが考えられます。
 

回答者自身について聞く

記述式質問の回答で多く見られるのが、「自分はこの製品をまあ好きだけど、人によって好みが分かれると思う」などという回答です。おそらくそのような回答者は自分の回答に自信を持って回答しにくいのでしょう。

そのため、記述式の質問文などには、「どの回答が正しい、間違っているということはありませんので、ご自身の率直なご意見をお聞かせください」というようなことをひとこと添えておくと、回答者が回答しやすくなります。
 

「その他」という選択肢を置く

複数回答の選択肢質問の場合、どれほど考えうる選択肢を用意しても完全には網羅できないものです。そのため、選択肢の最後に「その他」という選択肢を置き、さらに具体的に「その他」が何であるか記述できるようにしておきます。 ただし、結果を分析していて「その他」が全体の回答の2割以上を占める場合、設計が甘かった可能性があります。これは、重要な選択肢が抜けていたということだからです。
 

「答えたくない」という選択肢を置く

収入などのデリケートな質問には「答えたくない」という選択肢を置くこともあります。とはいえ、可能なら回答はしてもらいたいので、この選択肢は最後に置きます。
 

見直し

調査票はなるべく複数の人に見直してもらう方がいいです。 必要な質問が抜けていないか、回答がしやすいか、誤字・脱字がないか、など、十分時間をとってチェックしてもらいます。

このように、定量調査の調査票設計には注意すべき点がいろいろあります。 当社には調査票設計の経験が豊富なリサーチャーが皆様をサポートいたしますので、安心してご相談ください。