マーケティングとは「”誰に””何を“”どのように“どのように提供するかに関わる諸活動」で、最も重要なのは“誰に”になると前回記しました。その点についてもう少しお話ししましょう。 物作りの上で、誰を対象とするかによって出来上がる製品は異なります。仮に同じ製品であっても、そのコンセプトは大きく異なることでしょう。

ペルソナマーケティング

これまで、マーケティングミックスで“誰に”というとターゲットという言葉を多く用いてきました。が、ターゲットのデモグラフィック(属性)から踏み込んで、実在するかのような人物像を作り上げるペルソナマーケティングが主流になっています。

ペルソナとは、企業や製品の典型的、理想的なターゲットとなる顧客像のことです。ターゲットは所謂デモグラフィックといわれる統計学的な性別、年代、収入、住所等で分類していましたが、それにサイコグラフィック的要素である性格やライフスタイル、価値観を加え、更に氏名や年齢、職業、家族構成、趣味嗜好、外見の特徴等のかなり細かい情報を盛り込んで、あたかも実在する人物のように1人の人物を作り上げます。出来上がったペルソナの人物像を関係者全員でシェアすることによって、認識のズレを防いで統一でき、戦略も明確になります。ペルソナが設定されると、広告戦略やプロモーション戦略も明確になります。

化粧品の場合、同じデモグラフィックでも個人の考え方やライフスタイルで購入する製品や価格に大きな差がでます。例えば、年収300万円の人でも美容にかける熱意が高ければ高級化粧品を買うでしょう。年収1,000万円だったとしても、美容よりもっと違うことにお金を使う人はプチプラ化粧品を使っているかもしれません。

ペルソナを設定することで、そのニーズを満たす製品やサービスを作ることにつながり、ペルソナと同様な考えを持つ消費者の気持ちを満たすことになります。つまり、顧客視点に立ち、顧客の喜びにつながっていくのです。

ペルソナを設定するにあたり注意しなくてはいけないのは、担当者の希望や思い込み、先入観を反映しがちなことです。ペルソナが現在の顧客と大きく乖離してしまっては、設定する意味がなくなってしまいます。

現実的なペルソナ設定のためには、現在の顧客をよく分析し、口コミや、SNS等からの情報を集めましょう。また、個客へのインターネットアンケートも有効です。顧客の調査(フォーカスグループインタビュー)を行えれば直接話を聞くこともできます。調査を行って、本当の肌の悩みや理想の肌、化粧品を選ぶ際の情報収集の方法、商品を知ったきっかけ、購入の決め手などを、デモグラフィック、サイコグラフィックを通してできた人物像にプラスすることによって、より実在する顧客に近づけることができると思います。

ペルソナを設定するには意外と労力がかかります。調査を行えば費用もかかります。また、一度ペルソナを決定してもそれで終わりではありません。このコラムを読んでくださっているあなたと同様に、お客様の心も日々変わっていきます。定期的にアップデートして変化との誤差を修正していくことが必要です。